haratkhr技報

SRモータ技術研究所

模擬開発

はじめにに書きましたが、この技報はNewSRモータの設計者教育として始めました。

研究、開発とはどの様に行われるのかを紹介するため、模擬開発を行います。

開発テーマは「単相誘導モータの新始動方式の開発」にします。

 

商品化されている方式に追加してインバータ始動式を開発します。

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単相誘導モーターの原理 の中で

「直流モータと同等の始動トルクが得られると予想しています。」としましたが、「現行以上の始動トルクが現行より小さい始動電流で得られると予想しています。」に修正します。

 単相誘導モーターの原理を見直すことにより、制御方法を明確にできた結果を基に、新方式の始動方式が出来る可能性に気付いた段階です。

 

双方向回転、コンデンサ常時接続モータ(推定出力50W)を使用して、検討、設計、試作を進めていきます。

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このモータの始動コンデンサは15μFで単価は100-200円と推定します。

特殊インバータ回路は1000円は必要と思いますが、当面コストは考えない事とします。

 

一般に、 開発テーマ、目標は、情報、経験、方向カンで決めます。

開発は設計と異なり、手順はなく、自ら考え、PCDAをまわす必要があります。

開発の場合、失敗は想定はしていませんが、目標が高ければ、現実にはよくあることです。

一ヶ月程度で中間結論を出したいと考えています。

 

おことわり

インバータ始動式がすでに開発されて、使用されている可能性はゼロではありませんが、調査はしていません。

使用される場合は権利関係の調査が必要です。

 

 

 

モータの原理と効率

誘導モーターの原理を見直してきましたが、最後に、直流モータとスイッチトリラクタンスモータの動作を、先日、出願したスイッチトリラクタンスモータの明細書で説明します。

 

【発明を実施するための形態】の抜粋

 

【0024】

従来の直流モータの巻線の構成と磁束の例を図4に示す。一般に、DCモータの回転原理はBLI則と呼ばれる、磁界を横切るようにおいた電線に電流Iを流すと、電線に発生する力で説明されますが、鉄心溝のある直流モータの場合、磁束は鉄心を通り、電線の空間には磁束がほとんど無く力の説明が出来ません。これを磁力線という概念によって統合して説明する方法があり、磁力線には、ゴムひものように縮もうとする作用があり、鉄の近くに電線を置いて電流を流すことで磁力線を曲げると、真っ直ぐになろうとする力が働くと説明されます。図4に示す電機子位置でシンボルで示す正負の方向に電機子に電流を流すと「右ネジの法則」に従って、電流を中心とした、同心円状の磁束が発生します。永久磁石による磁束と電機子による磁束が加算され、矢印で示す曲がった磁束が発生し、真っ直ぐになろうとする力が発生し、反時計回転方向CCWへトルクが発生する。

 【0025】
直流モータの電機子を電機子に電流を流さないで、回転させると、巻線と鎖交する磁束の時間的変化の割合いとして誘起電力が発生し、本発明のスイッチトリラクタンスモータも駆動電流を流さないで、回転させると誘起電力が発生します。磁力線が縮もうとする作用と、誘起電力からみると、本発明のスイッチトリラクタンスモータと直流モータの回転原理は同等である。本発明のスイッチトリラクタンスモータは、直流モータと同様に励磁磁束は変化せず励磁エネルギーを電源に回収する必要がないため力率は直流モータと同等となる。

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全てのモータは、SRモータをのぞいて、BLI則からくる、磁界を横切るようにおいた電線に電流を流したときの力で回転しています。

トルク発生の原理が同一のため、励磁電流の損失が効率に大きく影響します。

永久磁石が使用できる、DCモータ、PM同期モータ、NewSRモータが有利になります。

誘導モータは励磁電流の損失に加え、トランスを介して2次電流を供給しているため、電流VAが2倍必要です。

 

アラゴの円盤

一般に、アラゴの円板から誘導モータの動作が説明されます。

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“アラゴの円板”は磁石を銅製の円板に接近させ、磁石を回転させると銅円板も回転する現象です。

銅円板には“電磁誘導の法則”および“レンツの法則”にしたがって発生した渦電流が流れ、“フレミングの左手の法則”にしたがって力が加わり、回転します。

 アラゴの円板と同様な原理で動くモータが誘導モータです。

銅板やアルミ板の代わりに、効率の良いかご形巻線をロータにして、ステータ巻線に3相交流を流して発生させた回転磁界により回転させます。

 同期モータの原理も回転磁界で説明されています。

磁界の中に互いに反対の磁極が向きあうように磁石をおいて、外側の界磁のほうを回転させれば、NとSの吸引力によって中の磁石も回転磁界の速さとまったく同じ速さで回転します。

  

この技報では、トルクの説明で、回転磁界、移動磁束を使用していません。

回転磁界、移動磁束を否定しているのでなく、視点を変えて説明しようとしています。

視点を変えると風景が変わり、物の見え方が変わり、制御の対称、制御の方法も変わります。

 

誘導モータのベクトル制御があります。

ロータの回転と一緒に回転する座標での視点では、ロータの上の2相電流は止まって見えます。静止して見える電流は直流として扱うことができます。

ベクトルエンジンとベクトル制御 | 東芝 ストレージ&デバイスソリューション社

(ベクトル制御は非常に複雑な工程を使った制御方法で、それを理解するためには数学的な知識を必要とします。

しかしながら、数式をなるべく使わずにベクトル制御のエッセンスを理解いただけるように解説します。)

 

単相誘導モータの新しい始動方式を考えています。

回転磁界を作るのでなく、2次電流と直交する励磁電流をどのように流すかの視点で考えています。

しかし、励磁電流を流そうとすると、かご型ローターに短絡電流が流れてしまうため、ムダな電力損が発生します。

ムダな電力損の発生をさけるには、周波数を下げて始動すればOKですが、コストがかかります。妙案がないかと思案中です。

同期モータ

同期モータの動作は一般に「回転磁界」で説明されています。

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磁界の中に互いに反対の磁極が向きあうように磁石をおいて、外側の界磁のほうを回転させれば、吸引力によって、中の磁石も回転磁界の速さと同じ速さで回転します。

磁石は電磁石または永久磁石PMが使用されます。

PM 同期モータは磁石が磁界をつくるため,励磁電流をなくすことができ、トルク電流のみ流せばいいので、誘導電動機よりも全損比較では30%程度の損失低減となります。
通常、磁石停止中のモータに50~60Hzの商用周波数の交流電圧を加えても、回転磁界の回転速度が速すぎて、右方向と左方向に力を受けてしまい、モータは始動しない。

始動機構を別に設けるか、位置検出付きのインバータで駆動されますが、小型の PM 同期モータは自始動します。

 

この技報の同期モータの概要、動作は以下のとおりとです。

 同期モータを、同期リラクタンスモータ と 同期制御モータ の2種類にわけます。

 

1.同期リラクタンスモータ 

磁界の中に磁石をおいて、外側の電圧を印加する駆動巻線を切り替え(回転)、リラクタンス力によって、中の磁石も回転磁界の速さと同じ速さで回転させます。

 

2.同期制御モータ 

回転子の磁極位置に応じて電圧を印加する駆動巻線を切り替え、印加電圧と速度起電力の差で決まる電流と回転子の磁束の直交でトルクを発生させます。

従って、位置検出器が必須で、一般的にはホールセンサやエンコーダなどが使用されます。

 三相DCブラシレスモータは三相商用周波数で駆動することはありませんが、動作はPM同期モータと同一です。

一般に、 三相DCブラシレスモータの原理の説明では、直流モータの原理との比較で説明されます。

直流モータが整流子で同期をとるのに対し、同期制御モータは位置検出器とインバータ駆動回路で同期をとっています。

DCブラシレスモータと直流モータの特性は同等で、直流モータと同様に同期回転数はなく、印加電圧と速度起電力の関係で回転数が決まります。

 

三相誘導モータ

三相誘導モータの動作は一般に「回転磁界と滑り」で説明されます。

 

三相誘導モータの固定子は各相の巻線が電気角で2π/3ずつずらして巻線され、一次に流れる三相の励磁電流によって固定子の中を一定速度で回転する回転磁界を生ずる。

二次側の回転子はこの回転磁界によって巻線内に起電力及びそれに伴う二次電流を生じ、トルクが発生する。

二次巻線が同期速度で、回転磁界の回転方向と同じ向きに回転すると、二次巻線には電磁誘導による起電力は生じないから二次電流も流れず、トルクは得られない。

 二次巻線内に起電力及びそれに伴う二次電流を流し、トルクを生ずるためには、二次巻線は必ず回転磁界より遅く回転していなければならない。

 

この技報の三相誘導モータの動作はは以下のとおりとです。

 

三相誘導モータのローターはかご型ローターを使用しています。

かご型ローターが停止状態で、A相の巻線にAC電源を接続すると、主巻線には、90°遅れた励磁電流と2次電流に対応した1次電流が合成され流れます。

この時の2次電流の値は2次電圧、速度起電力、かご型ローターの抵抗と主巻線の抵抗で決まり、AC電源と同相ですが、トルクは発生せず、回転しません。

他のB相、C相の巻線に2π/3ずつずらしたAC電圧を印加すると、各相とも90°遅れた励磁電流が流れ、合成された磁束は、A相の磁束と直交する直交磁束になります。

A相の2次電流と直交磁束によりユニバーサルモータと同様に、AC電源の極性に関係なく、同方向のトルクが発生します。

発生したトルクでローターが回転し、ローターの回転速度が上昇し、かご型ローターの速度起電力が2次電圧とほぼ等しくなる回転数(同期速度)になると2次電流の値がほぼゼロになり、トルクがゼロになり、回転速度の上昇がなくなり、同期速度より少し低い回転数で回り続けます。

 すなわち、

A相の2次電流とB相、C相による直交磁束が直交することによりA相のトルクが発生する。

相の2次電流とC相、A相による直交磁束が直交することにより相のトルクが発生する。

C相の2次電流とA相、B相による直交磁束が直交することによりC相のトルクが発生する。

 総トルクはA相のトルク、B相のトルク、C相のトルクの合計となります。

 2次電圧と速度起電力との差で決まる2次電流でトルクが生じ、回転数がきまります。

電圧と速度起電力との差で無負荷回転数が決まるしくみは直流モータと同等です。

 

積算電力計

積算電力計の回転円板の駆動トルクは、渦電流と磁束との関係で説明されるのが、一般的になっています。

 移動磁束での説明は少なくなっています。

 

回転円板の駆動トルクは、電流磁束による渦電流と電圧磁束との間のトルクと、電圧磁束による渦電流と電流磁束との間のトルクの合成で、
トルク =電圧磁束x電流磁束x力率となる。

 

この技報の積算電力計の駆動トルクの解説は以下のとおりとです。

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電圧コイルより、回転円板に2次電流が流れます。

2次電流と電流コイルの磁束の直交関係で力(回転力)が発生します。

上の図はこの動作の説明です。

 

また、

電流コイルより、回転円板に2次電流が流れます。

2次電流と電圧コイルの磁束の直交関係で上記と同方向の力(回転力)が発生します。

この力は小さいと思います。 

くま取りコイル単相誘導モーター

くま取りコイル単相誘導モーターの解説は、一般的に以下の様になっています。

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固定子磁極の一部に溝をつくり、これに短絡銅帯(くま取りコイル)を設る。

くま取りコイルがある部分の磁束は端絡環に短絡電流が流れるので、位相がコイルがない部分の磁束より遅れ、くま取りコイルがない部分からある部分方向に磁束が移動する現象が生ずる。

これにより左磁極では下から上、右磁極では上から下方向に磁束が移動し、回転子に右回転の始動トルクができる。

始動トルクは小さいので小型機に限定される。

 

この技報のくま取りコイル単相誘導モーターの解説は以下のとおりとです。

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始動トルクを発生させるには、2次電流の位相と直交磁束の位相を同相に

する必要があります。

単相誘導モーターの原理  で説明しています。)

主巻線の2次電流の位相は電源電圧と同相です。

主巻線の磁束は電源電圧より90°遅れます。

かご型ローターが停止時のくま取りコイルの電流は電源電圧と同相のため、くま取りコイルがある部分の磁束は90°の遅れより電源電圧の位相に近づきます。

直流モータと同様に、くま取りコイルがある部分の磁束と2次電流の関係で、回転子に小さい始動トルクが発生する。

 

かご型ローターが停止時の、くま取りコイルの電流の位相は電源電圧と同相ですが、回転を始めると少し遅れます。(実測)

 

コンデンサ始動単相誘導モーター

コンデンサ始動単相誘導モーターの解説は、一般的に以下の様になっています。

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 主巻線と始動巻線を直角方向に配列し、始動巻線にコンデンサを接続すると、各巻線の電流は90°の位相差のある交流となり、主巻線の磁束と始動巻線の磁束の合成磁束は一定の値で反時計回りに回転する回転磁界となり、回転子を回転させる。

 コンデンサによって、始動トルクが大きく、力率を改善できる。

 

この技報のコンデンサ始動単相誘導モーターの解説は以下のとおりとです。

 

始動トルクを発生させるには、2次電流の位相と直交磁束の位相を同相にする必要があります。

単相誘導モーターの原理  で説明しています。)

主巻線の2次電流の位相は電源電圧と同相です。

補助巻線に流れる電流位相を同相にするため、コンデンサを使用し90°進んだ電流を抵抗に流します。

抵抗の電圧は電源電圧より90°進んだ位相の電圧になります。

この抵抗の電圧を補助巻線に印加し直交磁束を作ります。

90°進んだ位相の電圧より、90°遅れ電源電圧と同相になります。

前記の抵抗は、実際は、かご型ローターの抵抗と補助巻線の抵抗が相当します。

始動し、定格回転数になると、速度起電力による電流による電圧と電源電圧が加算した電圧がコンデンサに印加され、コンデンサ電流が増加し、回転エネルギーが、補助巻線からも電力が供給されるようになります。

コンデンサ容量によりますが、補助巻線の電流が主巻線より大きくなる場合もあります。

 遠心力スイッチは必須でなく、小出力モータでは一般的に常時接続です。

分相始動単相誘導モーター

分相始動単相誘導モーターの解説は、一般的に以下の様になっています。

 

主巻線とそれに直角に補助巻線を設け、補助巻線電流位相を主巻線電流に対し進み位相とする事で始動トルクを得る、始動トルクが小さい方式であり、巻線の抵抗の損失を無くす為、始動後に遠心力スイッチによって補助巻線を開放します。

補助巻線は細線で巻数を少なくすると、抵抗が大きくしリアクタンスが小さくなるので補助巻線に流れる電流の位相が進み、両巻線の磁束に位相差ができ回転磁界ができる。

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この技報の分相始動単相誘導モーターの解説は以下のとおりとです。

 

始動トルクを発生させるには、2次電流の位相と直交磁束の位相を同相にする必要があります。

単相誘導モーターの原理 で説明しています。)

主巻線の2次電流の位相は電源電圧と同相です。

補助巻線の仕様が主巻線と同等とすると、電源から補助巻線に流れる電流は、主巻線励磁電流と同様に90°遅れます。

分相始動とは、補助巻線と直列に抵抗を入れ電流の遅れを少なくし、同相に近づけた始動方式です。

抵抗により、90°の遅れから、約20ー30°の遅れにしています。

位相差があると逆方向のトルクが発生します。

抵抗値により遅れを少なくすると、励磁電流が減少するためと、逆方向のトルクにより、始動トルクは小さい。

 

単相誘導モーターの原理

この技報の単相誘導モーターの概要、原理は以下のとおりとです。

 

 相誘導モーターのローターはかご型ローターを使用しています。

単相誘導モーターは主巻線のみでトルクが発生し、定格回転できます。

一度回転させると、回転方向が決まるが、両方向に回転できます。

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かご型ローターが停止状態で、主巻線にAC電源を接続すると、主巻線には、90°遅れた励磁電流と2次電流に対応した1次電流が合成され流れますが、トルクは発生せず、回転しません。

この時の2次電流の値はAC電源電圧、2次電圧、かご型ローターの速度起電力、かご型ローターの抵抗と主巻線の抵抗で決まり、AC電源と同相です。

外部の力でローターを回すと、主巻線の磁束により、ローター導体に励磁電流と同相の速度起電力が発生し、速度起電力より90°遅れた励磁電流が流れ、主巻線の磁束と直交する直交磁束が発生する。

直交磁束はAC電源より180°遅れ、主巻線の2次電流はAC電源の反転位相であり直交磁束と2次電流は同相となる。

主巻線の2次電流と直交磁束によりユニバーサルモータと同様に、AC電源の極性に関係なく、同方向のトルクが発生する。

ローターを一定速度以上までまわすと、直交磁束が大きくなり、発生したトルクが発電のトルクより大きくなると、自らローターを回転させ、ローターの回転速度が上昇し、かご型ローターの速度起電力が2次電圧とほぼ等しくなる回転数で回り続けます。

(直流モータの回転数が速度起電力と電源電圧の関係できまるのと同様です。)

始動巻線の電圧を測定すれば、直交磁束の値、位相を推定できます。

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 単相誘導モーターの原理を見直すことにより、制御方法を明確にできました。

その結果を基に、特殊インバータ回路を使用した新方式の始動方式の検討を始めました。

直流モータと同等の始動トルクが得られると予想しています。

詳細は後日紹介します。