商用トランスの励磁電流は、定格入力電流の1/10以下ですが、 商用電源に接続する時の電源の位相により、定格入力電流の10倍以上の励磁突入電流が流れることがあります。
商用トランスの基礎事項で説明しているBmは、通常時の最大磁束密度ですが、電源接続時のBmは通常時より高くなります。
商用トランスを商用電源に接続する時のタイミング(電源の位相)により、接続した最初の1サイクルの最大磁束密度は、最大通常時の2倍になります。
通常時の最大磁束密度を、1.5テスラに設定していると、3.0テスラになろうとしますが、実際は1.6-1.7テスラで飽和し、飽和後は一次巻線の抵抗値で制限される大電流がながれます。
商用トランスを商用電源に接続する時の電源の位相が90度(270度)であれば、異常突入電流は発生しません。
商用トランスを商用電源に接続する時の電源の位相が0度(180度)であれば、Bmは通常時の2倍になります。
通常時の最大磁束密度は90度より180度までの電圧時間積で計算します。(90度で磁束密度=0、180度で最大磁束密度)
0度より180度までの電圧時間積は2倍になり、Bmも2倍になります。
通常時の最大磁束密度を、0.75テスラに設定すると、励磁突入電流は発生しませんが、銅損は4倍になります。
小容量のトランスでは騒音の問題が発生する場合がありますが、1サイクル以後は通常のBmになるため問題になることは少ないです。
大容量のトランスは注意が必要です。
トランスの出力を無負荷にして、電流制限抵抗を介して商用電源に接続した後、電流制限抵抗を短絡すれば、励磁突入電流を低減できます。
励磁突入電流は高周波トランスでも発生します。
インバータの起動時、最初のパルス幅を半分にする、電流検出回路で制限を設ける等の対策が採られています。