haratkhr技報

SRモータ技術研究所

自転車の発電機

自転車の発電機は、リブダイナモとハブダイナモがありますが、どちらも出力は交流です。

ダイナモとは、整流子を使った直流発電機を意味しますが、発電機がダイナモと呼ばれる場合があります。

 

自転車の発電機は、特殊な構造になっています。

巻線は円形ボビンに巻かれ、低磁束密度で表面積の広いの磁石を用い、ヨークの磁路は1mm厚の鉄板で構成されています。

 低磁束密度で表面積の広いの磁極と、高磁束密度の薄いヨークで磁路を構成しています。

 

リブダイナモの磁路構造とハブダイナモの磁路構造は異なりますが、基本は同一です。

 リブダイナモの磁路を構成している鉄板を一部変更すると、ハブダイナモの磁気構造になります。

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磁極の内側に磁石が配置されたのがリブダイナモ、外側に磁石が配置されたのがハブダイナモです。

ハブダイナモの回転数はリムダイナモの約1/35回と低いため、多極化と大型化、高性能磁石の採用で出力電圧を高めています。

極数は、ハブダイナモ32極、リブダイナモ8極(4極)が一般です。

 

リブダイナモは回転数の大きいため、電気特性は有利で小型ですが、機械損失が大きい構造になっています(ベアリングは不使用)。

 

リブダイナモを詳しく見てみました。

 

構造

磁石はN4極、S4極、計8極のフェライト磁石です。(Φ25mmX12mm)

巻線推定 線径0.35mm 200ターン(ボビンのマド7X7mm、占積率38%より)

巻線抵抗値 2.1Ω 

巻線L値 3.3mH(5.6mH磁石無し時)

 磁路 1 x 7 x 4 = 28 平方mm

磁路表面積 7 x 12 平方mm

磁石表面の磁束密度の推定 1.5TX1mm/12mm=0.125T以下で約0.1Tと推定します。

ギャップ 0.5mm

 

定格出力 (JIS C9502 自転車用灯火装置より)

・15km/hのとき 定格電圧 6V 定格出力2.4W (出力電流0.4A)

 15Km/h=250m/m ローラ径2cm -> 回転数 250x100/2x3.14=4000rpm

 ・5km/hのときの出力電圧は、速度15km/hのときの41%以上のこと。

・30km/hのときの出力電圧は、速度15km/hのときの133%以下のこと。

低速でも明るく、高速で白熱電球が切れない事を要求しています。

交流発電機と整流器を組み合わせた、車のオルタネータがエンジン回転数が変化しても出力電圧が一定になる事に近い要求です。

オルタネータは電磁石の電流を変えて磁束を制御して、出力電圧を一定にしていますが、自転車の発電機は永久磁石で磁束を制御できません。

 

負荷

白熱電球

直流特性(実測) DC6V/0.37A (DC2.5V/0.23A DC8V/0.44A)

 

 動作試験

電動ドライバーで回して発電しました。

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出力電圧 3.8V0p-> 2.7Vrms

周期 14ms 71.4Hz

回転数 71.4/4 x 60 =1071rpm

巻線抵抗値 2.1Ω と 巻線L値 3.3mHのため、負荷時は出力電圧が1.5V低下し、波形が少しかわりました。

(抵抗分 0.33Ax2.1Ω=0.7v )

 (L値分 jωL=2X3.14x71.4Hzx3.3mH=1.5 0.33Ax1.5=0.5V)

 

回転数を上げて回しました。

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出力電圧 7V0p-> 5Vrms

周期 7ms 143Hz

回転数 143/4 x 60 =2145rpm

負荷時は出力電圧が3V低下し、波形は正弦波になりました。

 

4000rpmの出力電圧の推定

比例計算では9.3V(5v X 4000/2145 = 9.3V)になりますが、周波数が高く(277Hz)なるためL値による電圧降下が大きくなって6Vになると思います。

 

自転車の発電機は周波数が高くなると、巻線L値のインピーダンスが大きくなること及び鉄心の飽和を利用して、出力電圧が高くなるのを抑えていると推定します。

 

電子制御が一般でない時代の知恵だと思います。

LEDが光源のリブダイナモもありますので、機会があれば見てみたいと考えています。