haratkhr技報

SRモータ技術研究所

PMモータの駆動

ハイブリッド車用の3相IPMモータは、速度起電力が交流の正弦波であるため、3相ブリッジ回路を用い、正弦波電圧で駆動します。

 PMモータは回転数に比例した速度起電力が発生し、電流値と電流方向で、トルク値とトルク方向が決まります。

 

1モータハイブリッド車の動作モードは以下の通りです。

 1. EV走行モード (モータのみで走行します。)

 2. アシスト走行モード(エンジンとモータで走行します。)

 3. 回生発電ブレーキモード(ブレーキトルクを発生させ発電します。)

 4. 走行発電モード(走行しながら、発電します。)

 5. 停止発電モード (停止中にエンジンをまわして、発電します。)

 

モータの回転数は変化し、速度起電力も変化します。

インバーター発電機 の場合、速度起電力のピーク値と出力電圧は略同一になる様に発電機の回転数を制御しますが、速度起電力が変化する場合の発電制御は昇圧動作が必要であり、複雑になります。

 

制御の基本動作は、電源電圧Vを速度起電力eより高くする走行(モータ)動作と、電源電圧Vを速度起電力eより低くする回生(発電)動作になります。

電源電圧Vと速度起電力eの差により電流値と電流方向がきまります。

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電流の基本はI=(V-e)/Rできまり、電流の極性によりトルクの方向が変わり、力行と回生になります。

速度起電力eから電源電圧Vに電流が流れる動作が発電であり、回生と呼ばれています。

Lは電流の変化を抑える様に働きます。

 

各モードの動作を簡略化してPMブラシモータの等価回路を例に、 推定した動作を説明します。

電圧が変動する電源電圧Vをつくる方法として2つの方法が考えられます。

A.昇降圧チョッパーによるDC-DCコンバータを設け、 電源電圧Vと電池電圧間でコンバートする。

B.DC-DCコンバータを用いず、 3相ブリッジ回路のPWM制御とLにより、電源電圧Vと電池電圧間で電流をやりとりする。

どちらの方法でも、

 電源電圧V=電池電圧xPWMのduty比となります。

 高い電圧より低い電圧へ電流がれる降圧チョッパーの動作は分かりやすいが、低い電圧より高い電圧に電流をながす、昇圧チョッパーの動作は分かりにくいです。

PFC回路 、同期整流回路 を参考にしてください。

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実際のハイブリッド車にはB.が採用されていると思います。

すべてのモードで、制御回路、電池、モータを保護するため、電流の最大値を制限する制御が動作しています。

 

 1. EV走行モード 

電源電圧Vを制御することにより回転数を決めます。

回転数が増加すると速度起電力eが大きくなり、電流は減少するため、

電源電圧V≒速度起電力eに近い回転数になります。

 

 2. アシスト走行モード

回転数は主として、エンジンで決まります。

定電流制御により、回転数に関係なく、電流に比例するアシストトルクを決めます。

 

3. 回生発電モード

回転数はブレーキ動作に入る前の走行状態で決まっています。

電源電圧Vを速度起電力eより低い状態で、定電流制御により、回転数に関係なく、電流に比例するブレーキトルクを決めます。

ブレーキにより、 速度が低下するにつれ、速度起電力も低下するため、電流値を維持するため、電源電圧Vを低下させます。

 

4. 走行発電モード     

走行中の速度により回転数は変化し、速度起電力eも変化します。

電源電圧Vを速度起電力eより低い状態で、定電流制御により、回転数に関係なく、発電電流を決めます。

 

 5. 停止発電モード

停止中にエンジンをまわして、発電し電池を充電します。

エンジン回転数はアイドリングより少し高い約1500rpmにし、変速機でモータの回転数が決まります。

制御方法は2通り考えられます。

イ.4.走行発電モード と同様に電源電圧Vを速度起電力eより低くし、 定電流制御により、回転数に関係なく、発電電流を決めます。

ロ.  インバーター発電機 の場合と同様、速度起電力のピーク値と出力電圧は略同一になる様に発電機の回転数をきめる。

ロ.は、昇圧動作が不要で高効率ですが、モータの回転数を高くする必要があるため採用されていないと思います。

  

ハイブリッド車のモータの回転数は変速機が関係していますが、公表されてなく回転数が不明なため、動作の推定は困難です。

 

EV車は変速機がありませんので、モータの回転数、速度起電力は推定できます。

動作モードは走行モードと回生モードのみです。

速度起電力が電池電圧近くになると電流が流れなくなるため、特別な昇圧コンバーターが無ければ、最高速度の速度起電力は電池電圧以下になります。