電磁誘導を利用した機器の動作を再確認します。
ファラデーの電磁誘導の法則は、鎖交する磁束が変化した時、導体に発生する誘起電圧Vと磁束Φの関係を表しています。
この法則は、変圧器、インダクタ、発電機、電動機等の基本原理です。
電磁誘導を利用した機器の動作は、誘起電圧に電流を流した場合の理解が必要です。
dΦ/dtが生じるのは、
①巻線に電圧が印加されて磁束が変化する場合
②巻線、鉄心、磁石等の位置関係が変化し、巻線と鎖交する磁束が変化する場合 があります。
(②により発生する誘起電圧が 速度起電力 です。)
1.変圧器
1次巻線に交流電圧を印加すると電磁誘導の法則に従って磁束の変化より磁束が決まることを利用しています。
交流電源電圧が正弦波の場合、磁束は90度遅れた正弦波となり、
この磁束になる様に、電流が決まります。
◎励磁電流
商用変圧器の励磁電流例
変圧器に使用されている珪素鋼板はB-Hカーブが直線でなく、ヒステリシスがあり、励磁電流は正弦波よりズレます。
◎2次/1次電流の関係
dΦ/dtにより2次巻線に電圧が発生しているため、負荷を繋ぐと2次電流が流れます。
磁束が変化しない様に、2次電流によるアンペアターン(I2xN2)を打ち消す1次電流(I1xN1)が流れます。
( 詳細は トランスの設計 を参照してください。)
2.インダクタ
巻線に電圧を印加すると電磁誘導の法則に従って磁束の変化が決まることを利用しています。
磁束は印加電圧の積分になり、
印加電圧が正弦波の場合、磁束(電流)は90度遅れた正弦波になり、
印加電圧が直流電圧の場合、磁束(電流)は一定の勾配で増加します。
正弦波電圧印加時の 電流例
インダクタはギャップを設けているため珪素鋼板の影響が少なく、B-Hカーブがほぼ直線になり、磁束と電流は同相波形になります。
右の波形は電流が大きくなった期間で鉄心が飽和に近づき電流が正弦波からずれていますが、磁束は正弦波のままです。
( 詳細は チョークの設計 を参照してください。)
3.発電機
発電機を回転させ、巻線と鎖交する磁束の変化より、誘起電圧(速度起電力)が発生します。
この誘起電圧に負荷抵抗を繋ぐと電流が流れますが、発電機を回転させるには(出力電圧x出力電流)に相当する機械エネルギーが必要です。
( 詳細は 速度起電力 を参照して下さい。)
4.直流モータ
電機子を回転させるとと巻線と鎖交する磁束の変化より誘起電圧(速度起電力 )が発生します。
この誘起電圧に電流を流すと(電圧x電流)の電気エネルギーが機械(回転)エネルギーに変換されます。
(詳細は ユニバーサルモータの回転原理 を参照してください。)
5.SRモータ
励磁巻線に電圧を加えて、突極を持った回転子が回転すると、印加電圧により鉄心の磁束が増加するのと同時に、回転による磁気回路の変化により誘起電圧(速度起電力 )が発生します。
巻線に加えられた電気エネルギーが磁界エネルギーと機械エネルギーに変換されます。
( 詳細は SRモータはエネルギ-蓄積機器 を参照してください。)