haratkhr技報

SRモータ技術研究所

熱起電力

熱起電力に関する効果、素子を調べました。

 

ゼーベック効果

2つの異なる金属をつなげて、両方の接点に温度差を与えると熱起電力が発生し、電流が流れます。

熱起電力の極性と大きさは2種類の導体の材質と両端の温度差によって決まります。

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熱起電力は各接点で発生し、極性と電圧は金属の組み合わせできまり、電圧は絶対温度に比例し、二つの熱起電力の差と抵抗値で電流がきまります。

 

熱電発電

2つの異なる金属の接合点の一方を高熱源、他方を低熱源に接触させると、熱起電力の差が生じ、熱エネルギーを電気エネルギーに変換します。

但し、2つ金属による熱起電力は小さく、大きい クロメル - コンスタンタンでも約6.3mV/100℃で、金属材料による熱電発電の実用化は困難と思います。

 

熱電対

二種類の異なる金属導体で構成された温度センサです。

測温接点の温度と計測器側接点の温度の差による電圧を測定し、温度と熱起電力の関係データより温度差に戻し、基準接点の気温を加算し測温接点

の温度を求めます。

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放射温度計

物体から放射された赤外線をレンズで複数の熱電対を直列に接続したサーモパイルと呼ばれる検出素子に集光し暖め、温接点のみ加熱します。

ゼーベック効果で温接点の熱起電力と冷接点の熱起電力間に電圧差が生じ、直列出力端子に温度に応じた電圧が発生し、補正を行ない物体の表面温度を求めます。

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 ペルチェ効果

二つの異種金属を電気的に直列に接合して電流を流すと、その接合部に吸熱及び発熱が発生します。

 

この技報のペルチェ効果

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二つの異種金属を電気的に直列に接合して、電源により電流を流すと、熱起電力の極性と電流方向が同一の極が発熱し、逆の極が吸熱します。

熱起電力は各接点で発生しており、電流を流すとE=VxIの電気エネルギーが熱エネルギーと変換されます。

 

ペルチェ素子

電流を流すことによって熱を移動させる半導体の熱電変換デバイスです。

P型熱電半導体とN型熱電半導体を金属で接合し、P型の方から電流を流すと、上側の接合面から下側の接合面へ熱を運びます。

電流の方向を逆にすると、熱の移動方向も逆になるので冷却・加熱することが可能です。

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ペルチェ素子モジュール

効率をあげるには、小さな熱起電力のペルチェ素子を多数直列接続し、電圧を高くする必要があります。

絶縁体で熱伝導性に優れたセラミック基板と、セラミック基板上に設けられた金属材料と、熱電半導体を用いることで、熱起電力の大きいモジュールが作成できます。

 

半導体熱電材料 

 p型:正孔数が電子数より多い物質で、一端を加熱することで正孔が低温側へ拡散していくため、低温側が高電位(+極)になります。

n型:電子数が正孔数よりも多い物質で、一端を加熱することで低温側に電子が拡散で集まってくるため、高温側が高電位(+極)になります。

 

各素子の特性測定 例

1.熱電対

熱電対温度形の指示温度と熱電対のデータより求めた熱起電力は、実測の測定値と値が一致します。

テスターの指示温度:230℃ 周囲温度:30℃

熱電対の種類:K (9.343mV at  230℃、1.203mV at 30℃)

熱電対の両端電圧測定値:8mV

 

2.ペルチェ素子モジュール

放熱状況

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ペルチェ素子モジュール:127サーモカップル 外界40mmX40mmX3.7mm

 

測定例

2.1 印加電圧:8.5V 電流:1.6A 

   熱起電力:2.0V 半導体抵抗電圧:6.5V 

   A点温度:51℃ B点温度:15℃ 周囲温度:30℃ 

   ファン冷却なし

 2.2 印加電圧:8.4V 電流:1.7A 

   熱起電力:1.8V 半導体抵抗電圧:6.6V 

   A点温度:41℃ B点温度:13℃ 周囲温度:30℃

   A点のアルミ板をファン冷却 

 2.3 印加電圧:-8.2V 電流:-1.7A 

    熱起電力:2.0V 半導体抵抗電圧:6.2V  

   A点温度:24℃ B点温度:44℃ 周囲温度:30℃

   電流方向を逆にして測定した。

 2.4 印加電圧:9.9V 電流:2.0A 

   熱起電力:2.0V 半導体抵抗電圧:7.9V 

   A点温度:35℃ B点温度:10℃ 周囲温度:30℃

   A点のアルミ板をファン冷却( 強風)

  

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・温度が安定状態で、電流を停止した時点の誘起電圧を測定し熱起電力としました。

電流を急にゼロにすると、抵抗での電圧降下が無くなり、電圧は熱起電力のみとなり、電流を流していた時の熱起電力が測定できると推定しています。

・接合部の温度は測定できませんでしたが、 A点温度:41℃ B点温度:13℃より、接点間温度差は約60℃と推定しています。

半導体の抵抗が大きく、印加電圧の約22%のみが熱起電力としての仕事となっています。

推定抵抗値 = 6.5V/1.6A≒ 4Ω

熱仕事量 = 2V x 1.6A = 3.2W

抵抗電力損=6.5V x 1.6A=10.4W

接合起電力(1基本接点)=2000mV/(127x2)=7.9mV

 

ペルチェ効果の吸熱は、

機械エネルギーが電気エネルギーに変換される発電と同様に、

熱エネルギーが電気エネルギーに変換され、熱エネルギーが減少し吸熱すると考えています。