リチウムイオン電池を使用したモバイルバッテリーが広く使われています。
リチウムイオン電池はエネルギー密度が高く、周辺回路は安全対策が必要です。
リチウムイオン電池専用の充放電制御IC、保護回路ICが各種開発されています。
安全対策、制御の概要を把握するため、シンプルなモバイルバッテリー (2000mAh/ 300円)を調べました。
回路
SY3501は、リチウムイオン電池1セル専用の充電、昇圧制御ICです。
DW01Aは電池の異常検出と双方向ON/OFFスイッチの駆動ICです。
FS8205はNチャンネルFET2個で構成する双方向ON/OFFスイッチです。
使用方法
USB-INに5Vを入力するとリチウムイオン電池の充電が開始し、充電中はLED2(赤)が点滅し、電池電圧4.2Vで満充電となり連続点等します。
USB-OUTにスマートファオンを繋ぐとスマートファオンの充電が始まり、LED1(青)が点等し、蓄電残量が10%以下に点滅し、電池電圧3.4V以下になると終了し消灯します。
スマートフォンの充電電流はスマートフォンが管理し、モバイルバッテリーの出力は電流制限付の定電圧出力(5V/1A)です。
(充電電流が電流制限値以上に設定されている機器の充電は出来ません。)
USB-INに5V入力が無い時は、常に昇圧回路が動作し、USB-OUTに5Vが出力されています。従って充電量は少しですが徐々に減少します。
昇圧回路
・FETによる同期整流昇圧チョッパー
・周期1μS、Duty可変制御
スマートフォンの充電時
2つFETの駆動信号のインターロック時間、スナバー回路の定数
が適切に設定されてます。
スマートフォンの非接続時
充電電流が電流制限値以上時
充電回路
・SY3501の充電回路はスイッチング回路でなく、リニアー電流制限回路が用いられています。
・制御ICの充電回路は損失があり発熱します。
(損失max ≒(5V-3.5V)x 0.7A = 1.05W)
・電池電圧と充電電流は関連付けられています。
・充電回路は、定電圧回路(約4.37V)より抵抗(1.24Ω)により電流制限した回路構成(又は同等の半導体定電流回路)と推定します。
充電例
電池電圧 : 電流 :時間経過
3.5V : 0.7A(0.35C) : 充電開始
3.6V : 0.6A : 2分
3.8V : 0.5A : 20分
3.9V : 0.4A : 40分
4.0V : 0.3A : 1時間20分
4.1V : 0.25A : 2時間
4.15V : 0.24A : 3時間
4.18V : 0.20A(1/10C) : 4時間
4.199V : 0.14A: 7時間20分
4.20V :0A : 7時間30分(充電完了)
充電完了後の電池電圧は4.07Vでした。
異常対策
異常時に保護ICが双方向FETスイッチをオフさせ、電池を充電制御ICから遮断しています。
保護ICは、DW01A(One Cell Litium-ion/Polymer Battery Protection IC)を使用しています。
保護ICの内部ブッロク
◎Overcharge 比較器
◎Overdischarge 比較器
◎Short circuit 比較器
◎Over current比較器
◎Charger 比較器
◎Oscilltor Controi Circuit
◎双方向FETスイッチ駆動回路
・保護ICは電池を電源とし単独で動作します。
・電池電流は双方向FETスイッチのオン抵抗(30+30mΩ)による電圧降下(42mV/0.7A)より検出しています。
双方向FETスイッチ駆動回路
見慣れないドライブ回路で、内部回路は非公開です。
(ICのCOMと充電制御FETのソースが共通でない。)
推定駆動回路
・充電制御FETの 高速応答は困難ですが、確実にON/OFFできます。
充電レベルの表示
一般に、バッテリ電圧から充電レベルを求めると、精度は25%以下となります。
モニタリングによる高精度の残量表示用ICも各種開発されている様ですが詳細、精度は不明です。