2021年8月17日にローレンス・リバモア国立研究所が192本のレーザーを用いて核融合を発生させ、1京ワットを超える膨大なエネルギーを発生させることに成功したとのニュースがありました。
「核融合が商業的に実行可能になるまでにはまだまだ長い道のりがある」との事ですが、このニュースの理解を深めるために核融合反応を調べました。
1. D-T反応
核融合反応は、2つの原子核を十分に近づけて、量子トンネル効果により核子を融合させる反応です。
核融合炉は、最も反応が起こりやすいD-T反応が用いられます。
DとTの原子核が核融合反応を起こすためには、数十keVのエネルギーが必要です。
この程度のエネルギーは加速器で簡単に得られ、DまたはTのイオンを加速して、固体ターゲットに衝突させることで核融合炉が実現しそうですが、固体ターゲットにイオンが入射すると、エネルギーの大部分は固体中の電子との相互作用で失われるため核融合出力を得ることは不可との結論になりました。
2. 熱核融合反応
そこで、DとTを超高温のガス状態にして、イオンの熱運動で核子同士を衝突させて核融合反応を起こす方法が考えられました。
核融合反応に必要な数十keVというエネルギーをイオンが持つためには、数億度という高い温度が必要です。
高温になり、原子を構成する原子核と電子が遊離して、自由に運動するような状態をプラズマと呼び、超高温のプラズマ中で起こる核融合反応を熱核融合反応と呼びます。
3. エネルギー閉じ込め
プラズマの熱エネルギーが外部に失われる時間をエネルギー閉じ込め時間τと呼びます。
定常状態のプラズマでは、外部へ失われる熱エネルギーを核融合で生じるα粒子のエネルギーと外部からの加熱エネルギーでまかないます。
①プラズマを数億度という超高温に加熱する
②その超高温プラズマを“閉じ込めて”、熱エネルギーが外部に失われる時間を十分に長くする
③核融合反応の頻度を高めるためにプラズマの密度を上げる
5. 炉心プラズマの特性
現在、研究開発の中心になっているトカマク型は1950年代にソ連で考案された閉じ込め方式です。
2025年にトカマク型の ITER が運転開始して、2050年に核融合原型炉の建設と運用が完了する計画が示されていますが前途不明です。
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