haratkhr技報

SRモータ技術研究所

SRモータの設計法

設計は要求仕様に合うよう、多数の事柄をきめます。

ポイントをおさえて、一つ一つ決めていく手順のマニュアル化は重要です。

 

チョークの設計法

同じ電磁機器であるチョークの設計法を説明します。

要求仕様は一般に、周波数特性と定格(三種類)と損失です。

最初に従来の設計例より最高磁束密度Bm、磁路断面積sをきめます。

要求仕様と以下の式の一つを用いて巻数nが決まります。(三つの式は同一の内容です。)

  Bm=V/(4.44×n×s×f)(正弦波実効値電圧、周波数)

  Bm=(V×t)/(n×s)(電圧時間積)

  Bm=(I×L)/(n×s)(L値、電流)

   (sとnを決める装荷分配は設計の中心です。)

その後、巻線寸法、損失を考慮して鉄心形状、線径をきめれば基本設計は完了です。

鉄損は素材特性表より、銅損は計算で求めます。

ギャップ長は計算するが、鉄心の特性を100%計算出来ないため参考値とする。

要求仕様と整合し不具合があれば、s、n、鉄心形状、線径の再設定になります。

最後に、試作を行い電流が仕様通りになるギャップ長を決定し設計試作は完了です。

電気特性は上記の知識のみで、机上計算により95%要求仕様の通りに設定できます。

 

 2017 07 20 

SRモータの設計法

(SRモータ突極モデル による設計)

 

要求仕様

定格電圧V=200V 定格出力P=500W 定格回転数=9000rpm 最大磁束密度Bm=1.5T ギャップ=0.5mm

トルクT=500W/((9000rpm/60s)x2π)=0.53 [Nm]

 極数:2相4/8極

 

設計手順

励磁サイクルエネルギー= 500/((9000/60)x8位置/回転)

           =0.42[J]

1.5T、G=0.5mm、ギャップのエネルギー密度uより必要な磁極表面積を計算する。

磁極表面積=(0.42/0.0009)x1/0.5x1/4極=233平方mm

(1.5Tのギャップの蓄積エネルギー密度u=0.0009)

 力率、余裕を考慮して、磁極断面積を10mmx25mm(積厚)とする。

 

起磁力U=NxI=磁束Φx磁気抵抗R=BgxSx磁気抵抗R

R=G/(μxS)

 1.5Tに必要なUは

U=(1.5xG)/(4πx10-7)=(1.5x0.0005)/(4πx10-7

 =597 となる。

 

1駆動サイクルの時間tの計算

t=1/((9000rpm/60s)x8極)=0.8mS

磁束密度B1.5Tの電圧時間積VT

B=VT/(NxS)

 

巻数の設定

VT=BxNxS

N=VT/(BxS)=(200V/4)x0.8mS/(1.5x0.025x0.01)≒107

余裕をみて110ターンとする。

 

電流の計算

U=597よりI=5.4Aとなる。

 

L値の計算

I=(dI/dt)x0.8mS

5.4A =(50V/L)x0.8mS

L=50V/5.4A x 0.8mS=7.4mH

 

ギャップの蓄積エネルギーEの確認。

E=4x 1/2 x 7.4mH x(5.4A )2 

  =0.43[J]

 

トルクの確認

ギャップの力=((Bg )2xS)/(2xμ0  )

      =(1.5x1.5x0.025x0.01)/(2x4πx10-7

      = 224[N] となる。

 回転方向の力を変移量から比例計算する。

回転方向の力=4極x224x0.5mm/10mm=44.8[N]

 トルク=44.8x0.013m≒0.58 [Nm]

 

回転方向の力をL値の変化量から計算する。

回転方向の力=1/2xdL/dθx(I )2

      =4極x1/2x(7.4mH/0.01m)x(5.4A )2

      =43.1[N] 

  トルク=43.1x0.013≒0.56 [Nm]

 

定格出力の確認

定格出力=トルク x ( 9000rpm/60S)x2π

    =0.56Nx150x2π=528W

 

力率=528W/200Vx5.4A=48.9%

 

巻線

 A相:110T+110T+110T+110T(直列)

 B相:110T+110T+110T+110T(直列)

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 銅損を50W以下にするにはA相、B相の巻線Rは1.7Ω以下にする必要があります。

5.4Ax5.4Ax1.7Ω=49.6W

 

上記の設計法で、要求仕様の90%以上に設定できることを期待していますが、検証は出来ていません。